インタビュー・コメント

DJ PMXに訊く! – Digital Performerベースでのトラックメイキング –

かつてはアンダーグラウンドの傾向にあったヒップホップシーンも、今ではTV番組やCMにも多く起用され、メインストリーム・カルチャーの一つとして老若男女に周知されています。今回は1980年代より活動を開始し、日本のヒップホップカルチャーを引き上げた第一人者の一人であるDJ PMXさんにお話を伺う機会をいただきました。

DJ PMXさんが手掛けられた多くのトラックは、昨今のバトルシーンやフロアのキラーチューンとして各地でプレイされており、そして現在もご自身で最新のサウンドを探求され続けています。長年Digital PerformerユーザーでもあるDJ PMXさんにこの度、トラックメイクについてお話を伺いました。

 

トラックメイクを始めるきっかけって何だったのでしょう?

物心ついたときからゴダイゴが好きで、小学生の頃からバンドをやりたいと思っていました。実際に中学にあがってからは実際にバンドも組んで始めたんです。その頃、YMOのシンセサイザーのサウンドに物凄い衝撃を受けた頃でもあるんです。当時アナログ・シンセがあれば何でもできると思ったんですよね。

友達の何人かもシンセを買って、自分もMono / Polyを買ってもらって、それでシンセバンドを組んでました。ピアノの音も人の声も作れるぐらいに思ってのめり込んでました。

 

音楽理論もその頃に習得したのですか?

その頃に鍵盤にドレミファソラシドが並んでいることを理解しました。それまでは音楽の授業が大嫌いだったんです。成績もずっと1だったし(笑)。

中学の頃、シンセサイザーの教室が近所にあったので、通おうと思ったんですけど、そのタイミングでキーボードの教室になってしまって、ロックのバッキングばっかりやっていたんんです。当時はそれが全く面白くなくて1年ぐらいの期間で辞めてしまったんです。ただ今思えば通い続けていれば今頃もう少し器用に弾けたかもしれないと思っています。現在はプログラミングできることを前提に鍵盤を使っていて、演奏を全然練習しないので。

 

 

バンドではシンセサイザーを演奏していたんですよね?

全て手弾きで演奏してました。シーケンサーも高価で買える余裕もなかったですし。ただ、その頃にMIDI規格が始まって打ち込みがそれほど難しく無くなってきたというか。YAMAHAの、パソコンに譜面を打ち込むソフトがあって、それはソフト内で完結するMIDIを出力するだけのソフトだったんですけど、その当時から今後パソコンで完結できるようなことになるであろうことは想像していたんです。

 

DJとして活動を始めるのはいつ頃からだったのでしょう?

大学入学を境に上京したんですけど、その頃にテクノの流れからハービー・ハンコックとかアフリカ・バンバータなどでヒップホップを知ったんです。上京後にはすぐにD Jセットも買いましたね。

一般的な認識としてDJをきっかけに音楽を始める人って、選曲して、曲同士を繋いで、クラブでプレイして…そういう感覚でのDJとは自分は違ったんです。当時の自分のクラブDJとしてのスタイルは、自分の曲をかけてライブをやる。一般的に認知されているクラブでDJする人とはその辺りの発想が違っていたと思います。クラブは自分の音楽を表現する場所。最近は自作曲を多くかけて、それにスクラッチも加えたり、ライブも交えたり。実際にDJと併行して曲も作り続けていました。DJもやるしプログラミングもする。時代の流れで音楽に関する、やれることは全部手をつけていきました。

 

当時、作曲に関して苦労なさったことなどありましたか?

最初はコードや音楽の理屈も全然わかってなくて、好きな曲を完コピしていく形で曲を作っていくことを習得していきました。その中で段々、CもDも全部同じでマイナーとメジャーの調が違うだけで、その中でもある部分が半音下がっているとか、そういうのがわかってきてから凄く曲制作も捗りましたね。

自作曲では、まずとにかく手弾きでいっぺんに弾いて、データをクオンタイズして、その中でもいいところだけを集めてエディットして、っていう流れで進めていました。ラップもそうですけどいいところだけ切り貼りしていく感じで。

 

 

ヒップホップのトラックメイクどんな機材からスタートされたのでしょうか?

自分が上京したあと、その頃のヒップホップのトラックはサンプリングが全盛の時代で、当時のトラック自体はそれほど音楽的である必要はなかったんです。サンプリングが台頭していた頃でもあったのでサンプラーのAKAI S900を買ってフレーズサンプリングを取り入れていってました。

その後90年代中期になってからはG-Funkにハマって、もっと音楽的なことが必要に感じたんです。一生懸命、音楽の理屈も会得していきました。

思い返せば中学の頃にコードのバッキングをやらされていた中で先生に「キーボードって打楽器なんだ」って教えられていて、それまでキーボードは弾くものだと思っていたんですけど「ドラムと一緒なんだ」って言われていて。それがずっと頭に残っていた中で、ヒップホップってそういうことなんだって、その頃に理解したんです。タイミングが全てだよなって。そこに音階がついていくというか。

 

トラックメイクの機材はどのように変わっていったのでしょう?

ちっちゃい窓がついてるKAWAI Q80っているシーケンサーを使っていたんです。周りのヒップホップやってる連中もこれを使っている人が多くて、自分も使っていました。これは数字で入力していくシーケンサーなんですけど、自分には数字で覚えていくのが苦手だったり、リアルタイムで打ち込んだデータにクオンタイズするだけで、タイミングをズラしたりすることが難しかったんです。それに限界を感じていた頃に、当時のMac、 PowerbookとVisionを導入したんです。シーケンサーにVisionを使って、音源には、EnsoniqのシンセとサンプラーのS1000。Roland JV-1080とかラックタイプのシンセを導入していっていきました。ROLAND、E-MU、YAMAHAのシンセをよく使ってましたね。

Visionが無くなってしまってから、MacにIntel CPUを搭載した頃にDigital Performer 5(以下DP)を本格的に導入して、音源もバーチャルシンセに移行していきました。他社のシーケンス・ソフトも試してはいたんですけど自分には合わなくて。DPはその前のバージョンの4の頃にも試していて、MIDIのタイミングをMPCライクに補正できたりしたこともあって導入したんです。バーチャルシンセも十分に使えていましたしね。それが2006-7年ごろ。1stソロアルバムの「The Original」は、DPとバーチャルシンセだけで作った初のアルバムでした。MPC60だけは今も残していますけど、ハードの音源はすべて手放して、今も全てバーチャルで制作しています。

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DJ PMX 1st Album「The Original」より、氏の代表曲のうちの一曲でもあるMiss Luxuryが収録されている

 

Miss Luxuryのトラックメイクはどのような工程で進められていたのでしょう?

自分がストックしているサンプル・コレクションにあった、ギターフレーズから着想を得て制作していきました。ギターのサンプルをサンプラーソフトに取り込んでからチョップして、制作を進めてました。

 

ビートの打ち込みに関してのポイントってありますか?

この頃だと手打ちでやっていたと思います。サンプラーソフトを立ち上げて、音源をトランスポーズしなくても使えるようにして、鍵盤で打ってます。鍵盤数の多いキーボードを使っているのもその理由で、SPLIT NOTEにして一度に鳴らせるようにしているんです。

ドラムの音色自体はサンプリング素材で使うこともあればバーチャルの音源を使うこともあります。MPCを使っていた頃にサンプリングした素材を使うこともありますね。

それに、DPのグルーヴプリセットを使ってノリを補正しています。DPに入っているグルーヴプリセットで、MPCの50-56%ぐらいのノリが個人的に好みで、大体のトラックにこのグルーヴを使っています。極端に数値を変えるとハネ過ぎてしまうんですが、これぐらいの値がベストなんです。

ちなみにエレピや上物に関しても、このMPCのグルーヴクオンタイズを使いますね。ベースはドラムに追従させてクオンタイズすることもありますけど、エレピやシンセなんかにもMPCの50%のグルーヴを使ってクオンタイズした後に、タイミングやベロシティのバラツキを加えたりしてます。DPの場合それが簡単にできます。さらに自分で抽出したグルーヴを充てることもあります。自分の好きなプロデューサーのトラックからグルーヴを抽出して研究したりもしました。トラックからオーディオを取り込んで、それをMIDI化して、タイミングを採って、、、自分でも調整しながらも、オリジナルのグルーヴを充ててノリを出すことに使うこともあります。

 

DPに内蔵されるグルーヴクオンタイズ機能。プリセットに収録されているAKAI MPCシリーズのプリセットを使うことで特有のノリが表現できる。

 

ちなみに、ドラムはトラックメイクの順番としては一番最後に入れています。ドラムからトラックを作り始めるとフレーズやタイミングが事前に決まっちゃうと感じがしちゃうというか、キックドラムの位置にベースを持っていかなかったりしないといけないとかの制限を感じるんです。

まず4小節のコードやメロのフレーズを作って、その後にベースを入れて、更にウワモノを足していく。最後にそれにハマるドラムを足していく感じです。

その後にDPでオーディオ化して、各トラックごとにオーディオデータとしてエディットしていきます。MIDIで4小節のループを作っていく中ではシンセ類に付いているリバーブとかのエフェクトは全てオフにしてまずは組んでいって、ミックスの段階でそれらを加えていく流れです。

 

トラックのベースとなる4小節のマルチトラックMIDIシーケンス。それらをオーディオ化して各トラックの抜き差しやエディット、ミックスを経て一曲として仕上げていく。

 

DPに内蔵される音源は使われていますか?

この曲のベーストラックではBasslineを使っています。フィルターをだいぶかけていて、丸い感じで音階がはっきりしない、低域があってモコモコした音が好きだったんで。丸い感じのサウンドになるようにハイをだいぶカットしてにして、ベースの主張を抑えて使っています。

BasslineのサウンドはMOOGに非常に近いですね。なのでG-Funk系のベーストラックにはよく使っています。それとDP内蔵のFMシンセであるProtonも、R&Bでよく使う手法のベンド操作でサイン波を気持ちよく鳴らしています。丸いサウンドが好きなのでProtonでもフィルターを結構使っています。Protonをモノにして、リードシンセとしても使ったりしていましたよ。

 

G-Funkのトラックにフィットしやすいと評価されるDP内蔵のMOOGを基としたシンセベース音源の“Bassline”と2オペレータのFM音源Proton

 

ネタ使いのトラックを創る際にはまた、違ったアプローチがあるんですよね?

トラックにもよりますけど全部弾き直しで作っていて、基本的には完コピしながらも各所フレーズを変えて作ることが多いです。今の制作スタイルでも同じですけど、まずコードから作って、ドラムは最後に入力していきます。

G-Funkのテイストや往年のクラシックスのアレンジをふんだんに取り入れ、全てDPで弾き直して制作された”4 My City”

 

2020年現在、4枚目のソロアルバムの制作を進められていると伺っています。最近のトラックメイクについてのエピソードも伺わせてください。

トランジェント・シェイパーのプラグイン、XLN Audio DS-10。ソースのアタックをコントロールする際に効果的に機能してくれる。

 

最近のトラックではドラムにXLN AudioのRetro Color(RC-20)を使うことが多いですね。RC-20はピアノとかにも使うこともありますけど。ドラム処理で言えばアタックをつけるときにDS-10をミックス時に使う機会も増えましたね。

RC-20は海外のクリエイター達が使っている様子を見る機会も増えていたのもありますし、TrapとかLo-Fiのトラックを聴いている中で、「これは使えそうだな」と思って導入してみたのがきっかけでした。 Trapとかのトラックで、ハーフタイムの、MIDIノートを前のめりに打ち込んで、音だけ劣化させる手法があって、それプラスRC-20も加えてみて、という使い方もしています。それ以外にもピアノとか楽器のトラックで使ってみてもフィーリングがすごく出るし、使う機会も増えています。

 

 

DS-10はSPLの Transient Designerみたいにアタックがしっかり出てくれますね。基本ドラムトラックにはコンプを通しているんですけど、今風なサウンドのアタックを出すには、このDS-10をコンプの後に挿れることで対応ができるんです。DS-10は主にキックとスネアに加えるんですけど、キーボードのシンセトラックにも使えます。アタックを出したいトラックには何にでも使えますね。

 

 

それと、コーラストラックを作るときにEastWest Voices of Soulも使いますね。今もまさにVoices of Soulを使ってトラックを作っていますよ。EastWestの音源はどんどん使いやすくなっていますね。Voices of Soul、めちゃくちゃ良いです。トラックのサビに入れるコーラスに充ててみたり、いろんなところで使っています。

Voices of Soulを導入してからは早速、HALOGENっていうアーティストの2019年末にリリースされたトラックに使っています。

 

 

基礎的な発声サンプルから、ソウルフルなフレーズまでをも収録したボーカル音源のEastWest Voices of Soul

 

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    業界トップのバックアップシンガーによる、WordBuilder機能搭載のボーカル・インストゥルメンツ

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DJやプロデュース業でもご多忙とは思いますが、そのほかに最近ではどのような活動をなさっていますか?

2020年春から洗足学園音楽大学で教鞭をとっています。

学校ではDJとトラックメイクについて、音楽・音響デザインコースで教えていて、ヒップホップの歴史だったりビートやトラックの作り方、DJのやり方等を教えています。ヒップホップでは、なんでみんなサンプリングを取り入れているのか?とか、トラップだったりG-Funkだったりのトラックが生まれた時代背景を踏まえて、トラック制作の手法も教えていく予定です。

DJやトラックメイクの実践もしながら、各時代にどういうビートが生まれてきたとか、要所でのシーンの背景についての講義も考えています。そういった背景を知らなくても、新しいものはできるかもしれません。だけど、それらバックボーンを理解しているのか、いないのかで創るのでは、全く異なりますからね。理解して創っていくことでもっといいものができると思うんです。

教授業以外の仕事としては自分の制作やプロデュースワークもありますし、DJでは銀座のPLUSTOKYOのレギュラーイベントでのDJも入っています。他にも渋谷だったり各地でもDJしてます。コロナの影響もあるし今のところわかってない部分もありますけど。

 

DJではどういったスタイルで現場に乗り込まれるのでしょう?

SeratoベースでDJをしていて、パソコンやレコードなど持ち回っています。必要なものが全て入るのでUDGのスリングバッグを使っています。

地方でのDJにしても、洋服の入った旅行カバンにUDGスリングバッグを上に挿して持っていくこともあります。このバッグは外でのレコーディングの時にも機材やマイクの電源ユニットも入るんで使いやすいですね。

 


最大約50枚の12インチレコードの収納が可能で、トロリーバッグに重ねて運搬することにも対応するUDGのスリングバッグ。

 

スリングバッグのほか、機材運搬用のトロリーとして複数のUDG製品を愛用

 

 

数々の弊社製品をご愛顧くださり、ありがとうございます。
新作や後進指導、DJに至っても今後のご活躍も楽しみにしております!

 

 


 

DJ PMX プロフィール

https://djpmx.com/

1980年後半から今に至って数多くのアーティストをプロデュース。アメリカ西海岸のヒップホップの影響を受け、JAPANESE WEST COAST HIPHOPの基盤をDS455のメンバーとして構築。2008年6月に自身初のソロアルバム「THE ORIGINAL」を発売し、AK-69、BIG RON、HI-D、OZROSAURUS、ZANG HAOZIなどの曲も手掛けるなど、幅広い人脈と確かなプロデュース・ワークがアーティストからも高い信頼を得、また新人の発掘と制作を請け負う「トータル・プロデューサー」としての手腕も高い評価を受ける。2ndありバム「THE ORIGINAL Ⅱ」を2012年に、3rdアルバム『THE ORIGINAL Ⅲ』を2017年にリリース。大ヒット・ミックスCD「LocoHAMA CRUISING」」シリーズも展開し、プロデューサー、DJとして活躍する。2020年より洗足学園音楽大学、音楽・音響デザインコースにてDJ&作編曲の分野で教鞭を執る。

 

 

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