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VENT reviews : Xone:96

2016年、東京・表参道にオープンしたヴェニュー・VENT。

オープン以来、東京のミュージックシーンにおいて一際の存在感を持つ同店で、Allen & Heath XONE:96のテストドライブを行いました。

XONE:92、Playdifferently MODEL 1をはじめとするUKミキサーを導入する同店において、Allen & Heath最新のフラッグシップとなるXONE:96の印象と、そのポテンシャルについて、VENTエグゼクティブプロデューサーの大城さん、サウンドデザインを担当するヒランヤアクセス藤田さんの両名に話を伺い、その模様をレポートします。

 

XONE:96のテストの前に、VENTについて伺わせてください。VENTでは、すでにAllen & Heath XONE:92、そしてPlaydifferently MODEL 1を導入いただいている背景を伺っておりましたが、2016年のオープンに差し当たって、どのようなポイントで機材選定を行われていたのでしょうか?

大城:構想段階からサウンドシステムにこだわったテクノ・ハウス専門店を考えていたので、スピーカーはもちろん、壁の素材からアンプ、それこそサウンドデザインを誰に頼むかも含めて、物件が決まる前から考え始めていました。機材選定のポイントは基本に忠実な考え方を持ちつつ、新しい機材もとにかく試しました。

 

Q:DJブースの機材に関してもオープン前からイメージはつけていたのですか?

大城:ブース機材に関しては、Allen & HeathとPioneerの機材はアーティストからの要望が多いので、考えるまでも無く導入を決めていました。定番といいますか。この規模の会場だと、アーティスト側もあって当然の機材だと思っているはずです。逆に悩むのはそれ以外の機材ですね。それくらい定番化していると言えます。

 

VENTのブースでテストする、MODEL 1(左)、XONE:92(中央)、XONE:96(右)

 

Q:現在VENTで展開されているイベントを拝見すると、海外アーティストのブッキングに力を入れられているように見受けられます。どういった意図でのブッキングなのでしょうか?また、海外アーティストと国内アーティストによる違いはありますか?

大城:「世界最高水準の音楽を毎週楽しんでもらいたい」という思いと、日本人のアーティストが、どれぐらいやれるのか、お客さんにしっかりと判断してもらいたいという思いがあるので、海外からのアーティストと、日本人アーティストを1日の中で並べています。そういう風に見ると、日本人のTOPクラスのアーティストのクオリティって実はすごく高くて。外タレを食っちゃうアーティストもいますし、DJのスキルという観点で言えば、先進国との差はかなり埋まってきてると思います。

 

Q:プレイアビリティや、精神面に関してはどうですか?

藤田:来日DJは優れた音質を揃え、高いコントロールを持ち合わせたすごい方がとても多く存在します。逆にそういったスキルが乏しい方も大勢います。最近の印象では、来日DJの腕も多様に変化してきているようにも感じられます。以前は、DJが交代、いきなりものすごいサウンドに切り替わって驚かせられるみたいな感じが、当たり前であった様に感じてましたけど、最近では、そういう瞬間をあまり感じないですね。そして、国内DJもかつてから凄腕ぞろいなんです。そうやってフロアーに育てて頂きました。

今シーンでどういうことが起こっているかというと、10年前、20年前と比較して、確実にDJ人口は増えているんです。極端、昨日DJを始めたという人でもDJを名乗れる時代で。そんな中、音質とか、空間鳴りに対する経験値ってのは様々で、そのスキルを持っている人は逆に減っているような気がします。だから、出番で音を出したときに「アレっ?」ていう、驚きがすくない、驚かせられる人が少なくなったと感じています。

質問の話に戻りますが、最近の印象だと、スキルレンジがすごく広くなった印象で、いろんなタイプのDJが増えた分、いろんなシーンが存在して、いろんなスキルの育ち方をみんなしていっていて、国籍の差というものはあまり感じられないです。その中でも日本人のアーティストの腕や経験値はすごく高いですよね。

 

Q:常設の機材に加えて、アーティスト達が使用する機材や、パフォーマンススタイルに変革や何れかのトレンドを感じられますか?

藤田:ミキサーの使い方というよりも、CDJやプレイヤーの扱い方に特徴をもった人が海外の人たちには多い印象があります。プレイヤーの使い方には差があるかもしれません。ブースに持ち込む楽曲のクオリティ、Cueやループの扱い方、そしてプレイヤー自体も2台だけではなくて、3台、4台を一緒に扱うとか、特徴的な使い方をしている方が多いのかな。

大城:現場でのレコード使用は減った気がしますね。ただその分、USBやCDでプレイするにあたって、音源の選び方やUSBやCDへの音の取り込み方など、気を使っているアーティストは増えてきている気がします。

 

Q:Allen & Heathミキサーの稼働率は如何でしょうか?また、どのようなアーティストからの指定される傾向がありますか?

大城:テクノに関して言うと、海外アーティストからはかなりの確率でAllen & Heathの指定があります。8割ぐらいですかね。中にはこだわりの強いアーティストもいて、” Xone:92のいつごろの製造のモデルを使いたい”という要望もあったりするので、現行モデルでは無い別の個体も導入しました。現在Xone:92は2台用意しています。

藤田:製造時期によって、ローの出方がちょっと違うんですよ。長時間プレイしたときなんかは、へたり方が違うんです。長い時間プレイしていると、機材の音が変わってくるんですよね。特にサウンドを突っ込んでいると、音の粘り感にちょっと違いがあったり、古いのは踏ん張ってくれるような感じがあるんです。

 

 左:ヒランヤアクセス藤田氏、右:VENTエグゼクティブプロデューサー大城氏

 

XONE:96は、現行機でありながらクラシックとされるXONE:92の仕様を踏襲しつつ、最新のツールを用いたパフォーマンスにも対応するポテンシャルを備えた、シリーズのフラッグシップラインナップとしています。それでは、XONE:96のテストについて伺います。

 

Q:XONE:96は、4つのフォノ/ライン/USBインプット切り替えに対応したステレオチャンネルを持っています。実際にVENTにてテストした結果、どのような音質評価がなされましたでしょうか?

藤田:上品なサウンドですよね。とてもシルキーでスムーズな印象です。

大城:僕もその印象です。よくまとまっていて、落ち着いた出音という印象です。Xone:96はDJを選ばずとも、一定のサウンドが出せそうな気がします。

藤田:Xone:92ってフォノ、ラインいずれの入力ソースを使っても、インプットの音の違いが少ないんです。他のミキサーって、そこが結構顕著に違ったりするんですけど、Xone:92はじめ、Xone:96も切り替えによる音質差が少ないのはすごいですね。その性能がXone:96にも受け継がれています。

それと、先ほどの空間演出という面で、Xone:96の音質には特徴を感じます。ステレオのワイド感であるとかもそうですし、凄腕の人がやったときと、そうでない人がやったときの差を埋められるような考え方をもっているんではなかろうか、と僕は読んでるんです。たとえば、セッションDJもそうなんですけど、Back to Backとかで二人でDJをする場合、二人でよっぽどの現場をこなしていると、音質もお互いに近いものでプレイできるんですけど、合わないことのほうが多い。そういうことが解消されるんじゃないかと思ってます。この辺りは、これからXone:96を使い込んでいくことでみえてくることなのかもしれないですね。

ただ、Xone:96で良くなっていっている点のサウンドは、Xone:92と比較しても全体的になめらかになっていっているような傾向が感じられるので、多くのDJにとって恩恵をうけられるポイントなのかと思います。ロー感のほうが大きくなって行ってるんですけど、ローをぐっと上げたときの、押しが出ているようになっているから、幅広く扱えるんではないかと。

 

今回のテストドライブで使用したXONE:96

 

Q:VENTでXONE:96の使用を想定すると、インストールされているアンプ+スピーカーに対して、どのようなチューニングを考えますか?

藤田:全体のチューニングはLakeでやっていて、音源調整を卓で行ってるんですが、VENTでのXone:96の使用に関して、基本のEQとしては、ちょっとミッドからハイにかけてを上げて使うかなっていう感じです。Xone:92と比較した場合ですね。サウンドを元気にしてあげるような感じです。

 

VENTのブースにてテストを行う藤田氏

 

Q:XONE:96はNative Instruments Traktor Scratch Cetified取得の2ポートのUSB端子、2系統のヘッドホンアウト、4系統のステレオリターンチャンネル、MIDIシンクアウト、フィルタークランチなどの新しい機能が搭載されています。店舗運営をなさっている視点で、どのような機能がアーティスト達に好まれると思いますか?

藤田:まず、僕が今回最も好印象だったのが、フェーダーなんです。めちゃめちゃ気持ちいい。この程よい重さとなめらかさ。92よりもアップデートされていて、微調整が非常に気持ちいいんです。この点がDJには受けると思います。それと、Boothモニターのハイ、ミッド、ローのEQ。ブースの音色を自分で調整できるのは、DJにとってすごくいいポイントだと思います。それと、二つのヘッドホンアウトも大いに使えますよね。最近はB2Bも多いので、二個ヘッドホンアウトがあって、かつそれぞれモニターソースを独立して設定できるのは嬉しい機能です。

それと、リターンチャンネルのEQが可変になったこともポイントです。マイクを扱うときにハウリングを回避できますよね。周波数が固定でなくなったことで、的確なEQが狙えるようになっています。シンセやラインソースを扱うにしても、自由度があるし、かつマイクに対しては一番効果がでるところだと思います。

Auxの二つの送りが変わらずにいてくれるのもすごく良いですよね。いままでの操作性を崩さないままにも、前よりも磨きをかけられたレイアウトだと思います。ボタンも前のものよりもよりしっかりした印象です。

 

Q:Filter Crunchはどういう印象ですか?

藤田:何かあたらしいことができるんじゃないかなっていう気がします。パンクなミックスというか、ノイジーな音にもできるので。とはいっても僕はもともとAllen & Heathのフィルターには好印象を持っていて。何が良いかというと、「効きすぎていない。」結局、パフォーマンスしている本人にとっての、効いてる」って、お客さんにとっては効きすぎている、ということにもなるんです。アレヒのフィルターってすごく馴染むんです。元々の楽曲にそういうフィルターが入ってたのっ?ていう感じの聞こえ方がするんです。そこの血統はちゃんとひいてて、そういう一歩引いたところでのクランチ感。みたいな印象がありつつも細かく効果も見えますよね。

 

Q:ありがとうございました。最後の質問となりますが、今後VENTの店舗運営においての目標、そして東京のナイトシーン、ミュージックシーンへのアプローチや展望を聞かせてもらえますか?

大城:サウンドシステムに関しては、VENTがVENTたる所以だと思うので、日々改善して更に上を目指したいと思います。近々ですとウーファーも入れ替えますし、Xone:96はじめ、新しい機材の導入も随時検討しています。

藤田:新しい機材は常にチェックして気にしています。部屋全体において、今の課題、そして新しい機材を導入したのちに生じる課題、終わりのないことかもしれませんが、どんどんアップデートしていきたい気持ちです。

大城:ブッキングに関して褒めていただける事が多いのですが、まだ100%だとは思っていなくて。オープン当初に比べると、少しですが時間に余裕もできたのと、サウンドシステムをはじめ、お店の評判を聞きつけTOPアーティストから逆指名を受けたりと、ブッキングの選択肢も増えてきたので、更に質の高い音楽を提供できると思うので、是非遊びに来てください。

 

 

ご協力ありがとうございました。

 

協力:VENT
URL:http://vent-tokyo.net/
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