インタビュー & コメント

声優、ナレーター「声の仕事」に活かすオーディオインターフェイス MOTU M2 レビュー by 葵井歌菜

初めまして、声優・ナレーターの葵井歌菜と申します。今回は新しく導入したオーディオインターフェイスのMOTU M2を実際に使ってみた上でレビューします。

 

宅録ナレーション

映画のTVCMのナレーションでデビューして以来TVCM、ラジオCM、VPと呼ばれる企業映像や日本テレビ系列「ワケあり!レッドゾーン」をはじめとするテレビ番組のナレーション、声優デビュー作の「ふらいんぐうぃっち」や「モンスターストライク」などのアニメやゲームのキャラクターの声、また「ポケットモンスター」シリーズの歌唱などこれまで多くの作品に声で携わってきましたが、実は2020年まで、私は自宅で声の収録をする機会はほとんどありませんでした。声優のアフレコの仕事にせよ、ナレーション収録にせよ、声を録る=スタジオでの収録、だったからです。

仕事では使わないのですが、数年前に家できれいに録音できる環境を整えたいと思い簡単には収録環境を持っていました。

私の事務所には録音環境が完備されていないためアニメやゲームのオーディションを受ける際は自分でボイスサンプルを録音せねばならず、以前はオーディションがあるたびに外部のスタジオを自分で借りてサンプル作成をしていたのですが、毎度毎度オーディションのたびにスタジオを抑えていたら破産してしまう…受かるかどうかわからないオーディションのために!!!ということで、録音機材を一式揃えてはあったのです。しかし、その先行投資(?)が功を奏する日がくるとは…!

そうです、新型コロナウイルスの大流行です。コロナの影響でアニメは軒並み分散収録、そして幸か不幸か、ナレーションの現場では「宅録」が一気に注目され始めてきました。某国民的番組ですら、緊急事態宣言中はナレーターさんがご自宅でご自分で音声収録をされていたこともあったそうです。私自身、自宅に録音環境があったことが幸いし、この間レギュラーTV番組・CM・VP・キャラクターソングなど、様々なジャンルの音声を自宅で収録することとなりました。

 

 

 

葵井歌菜の宅録環境

さて、そんな形で「オーディション用の音声を家で録れればそれでいい」という実にふんわりしたニーズから導入した私の宅録機材。お世辞にも知識が豊富といえるわけではない中、見よう見まねで収録機材を購入しました。マイクこそいろいろな機種を聴き比べて少しこだわってはみたものの、正直オーディオインターフェイスに関しては全くの無知でした。機種によってどんな違いがあるのかもわからない、どんな会社が有名で、どんな機種があるのか。そもそもオーディオインターフェイスの良し悪しの判断基準すら知らないから、比べようがない。

ということで、「取り急ぎ録れれば良いだろう!ついでに本格的に導入したいわけでもないから、安いやつでいいだろう!」という安易な発想のもと、複数のサイトで初心者向けに勧められていた、ユーザーも多いという触れ込みの某社のインターフェイスをフリマアプリにて数千円の品を中古で購入。コロナ禍に突入してからも、ふんわりと仕事用として使い続けていたのでした。

ちなみに、最近は先述の通り、誰もが知っているような番組のナレーションも宅録だったり、ナレーターさんの宿泊されているホテルで録られていたり…というケースが増えてきているようです。私もこの数年、ずっとレギュラーで担当している番組の音声は、自宅の録音ブースから生み出しています。業界全体としても「宅録ナレーター」という存在は感染リスク・コスト面など様々なメリットがあるため(もちろんそれ相応のデメリットもあるのですがここでは割愛いたします)重宝されてきている、という流れを感じています。

それゆえ、今まで宅録に手を出す必要がなかった十分なキャリアをもつナレーターさんも、これからナレーターを目指したい方も、自宅でナレーションの仕事を請け負いたいという、ナレーターの従来の姿である「スタジオナレーター」ではなく最初から「宅録ナレーター」を目指しているようなナレーションお勉強中の方まで、数年前の私とは比べ物にならないほど豊富な意欲や知識を持ってして宅録環境を整え出す方が増えてきているように思います。その需要の高まりを受け、音楽・歌の収録のみならず、音声収録にも非常に長けているMOTU Mシリーズが、発売から今日に至るまでずっと品薄だったということも頷けます。

 

    M2

    ESS SABRE 32 DAC、フルカラーディスプレイ搭載 2in 2out オーディオインターフ...

    ¥31,900 (税込)

 

気になるノイズと遅延

さて、そのような流れで、今までは廉価でユーザーが多そうという理由でなんとなく選んだインターフェイスで録音を続けていた私。正直、マイクや防音・吸音には多少気を遣っていたためか音質が悪いという指摘を受けることもなく、そこそこの使い心地で日々自宅で音声制作をしていました。ただ何点か気になることもあったのです。

まず一つは、ノイズ。無音時にも聞こえる、サーーーという残留ノイズです。バラエティ番組など、賑やかなBGMやSEと合わせる前提で録る音声であれば多少のノイズは気にならないのですが、繊細さが求められるウィスパーでのナレーションなどはやはりバックのノイズも少々気になる時がありました。

もう一つはレイテンシーです。ナレ録りをする際、制作さんがあらかじめ映像に原稿を当てはめて読んでくださった仮音声、いわゆる「仮ナレ」にタイミングを同期して収録するスタイルを求められることもあるのですが、私の使っていた録音環境では耳から仮ナレを聞いてそれと全く同じタイミングで喋り出しても、録音できたものを聴いてみると1秒ほどずれて録音されてしまっていました。録音データの頭をずれた分だけカットすれば済む話なのですが、毎度のことなので少し面倒に感じていました。

歌収録の際にこの面倒臭さはさらに増し、一度メインメロを歌った後にハモリを録りたい時、伴奏音源と歌データがずれているため一度綿密にタイミングを調整し、その作業を終えてからでないとハモリが録れない。

押すだけで体をお風呂上りの綺麗な状態にしてくれるボタンがあったら500万円までなら出すと常々思っているくらい面倒くさがりな私にとっては、毎度毎度あまり楽しくはない作業の一つでした。このように、現状の録音環境に若干の不便さを感じていた矢先、今回のMOTUレビューの機会が訪れました。

 

オーディオインターフェイスの刷新

今の環境にもそこまで大きな不満があるわけではないし、オーディオインターフェースが変わったくらいで音質ってそんなに向上するのかね…違いがわからなかったらどうしよう…。

さすがMOTU!知らなかった、こんなに音がいいなんて!すごい〜!せ!そ!と、「オーディオインターフェースのさしすせそ」を使って心にもないことを書かなければならないかもしれない…と一抹の不安を抱きながら、綺麗に梱包されたMOTU M2と対面したのです。

そして、私の不安は見事に杞憂に終わりました。

最初に目を引いたのは、黒を基調とした本体の前面をカラフルに彩るフルカラーディスプレイの美しさ。INとOUT、それぞれのレベルがひと目でわかるようになっており、実際に使ってみても入力レベルを目で見てすぐに確認できるため、デザイン性だけでなく実利も兼ね備えた質実剛健な作りとなっています。真っ黒な本体の中央に浮かび上がるカラーディスプレイが印象的です。

それ以外にもマイクのゲイン、全体ボリュームのゲイン、イヤホンのゲインとフロントパネルを見ただけで理解できる、非常にわかりやすいデザインとなっています。仕事道具は日々長時間を共にする相棒のようなものなので、見た目が可愛くてスタイリッシュというのも純粋に嬉しいポイントなのではないでしょうか。

 

 

私はMacユーザーなのですが、Macの場合専用ドライバをインストールしなくてもそのまま接続して使えるとのことで、初心者にとって高いハードルとなるセットアップの煩わしさからも解放されます。

私自身、何か新しい機材を導入するとき一番億劫なのが最初のセッティングです。人生でここの部分がうまく行った記憶がほとんどないくらい、導入時のトラブルはつきものでした。

このストレスで心をベキベキにへし折られる宅録初心者さん、私の仕事は原稿を読むことであって、機材を揃えることではない!!とやり場のない怒りを天に吠える初心者さん、とっても多いのではないでしょうか?

今回するりと実際に使えるところまで持ってくることができ、それだけでもMOTUを使用するメリットは大いにあると感じました。

ちなみに、別途専用ドライバをインストールするとレイテンシー速度の向上・ループバック機能の追加など、より快適に多用途で使えるようになるため、ドライバをインストールした上で使用されるのがおすすめです。

MOTU MシリーズMacユーザーのスタートガイドという動画もハイリゾリューションYouTubeにアップされています。

 

Windowsユーザーさんはこちら。

 

MOTU M2を使用してみて

実際にMOTUを使って音声を録音してみました。

せっかくなので、従来のインターフェースとMOTU,同じ防音環境、同じマイクで同じ文章を読んでみました。みなさんにも聴き比べてみてください。

 

 

 – MOTU M2と同価格帯のオーディオインターフェイスで収録されたナレーションのサンプル –

▼M2の収録サンプル

 

▼他社製インターフェイスの収録サンプル

 

※比較すると、M2のプリアンプは声のメインの音域となる200Hz付近を豊かに収録しており、リッチで芯があり、且つハッキリとしたサウンドに仕上がっている。

 

私が使って感じた特徴は…
・音がとにかくきれい。特に低音の響きに深みと厚みが増した
・音の輪郭がシャープになった
・返しをタイムラグなく聞けるのでスタジオ収録と同じ感覚で録れる
・ゲインをあげすぎなくてもしっかり録れる
ということです。

音質に関しては、予想を遥かに超えたレベルで違いを感じました。

そしてゲインをあげすぎなくてもしっかりと音を拾ってくれる点も最高です。その分余計な環境音・ノイズも減り、よりクリアな音を録ることができます。

ナレーションやセリフは、用途によってはウィスパーボイス・繊細な発声を必要とする場合もあるため、この特徴はナレーターにとって非常に役に立つと感じました。

 

宅録初心者にもオススメ

さらに、これから宅録を始めたい、インターフェイスや周辺機器の導入と同時にDAWソフトも考えていかなければならないという方にもおすすめなオプションが付いています。

インターフェースやマイク・周辺機器、さらにそれを繋ぐPCも揃えるとなると、かなりの金額になりますよね。その上録音用のDAWソフトまで買わなければいけないなんて…。すでに録音機材を揃えさえすれば確実に仕事があるとわかっている中堅以上のナレーターならまだしも、これからプロを目指す方・駆け出しのプロの方には非常に懐が痛むことだと思います。

その点、M2(あるいは他のMOTUオーディオインターフェイス)を購入し「motu.com」に登録すると、DAWソフト「Performer Lite」のライセンス提供&ダウンロード可能となるため、あとはマイクやスタンド、ヘッドホンなど周辺機器をそろえるだけでプロレベルの収録が可能になるのです。これは宅録初心者さんにとってかなりありがたいオプションです。

 

 

宅録の内容によっては、スタジオエンジニアさんが整音してくださるためナレーター側では特段音質の調整などせずデータを納品するケースもありますが、EQ、コンプレッサー、リバーブなど基礎的なプラグインのほか、完パケできる内容をこのソフトだけで仕上げることができるというのは、これから宅録をしていきたいという後発組にとってかなり差別化できる強みになっていくと思います。

 

 

– 葵井さんのボーカル、ドラム演奏を番組内で生収録 –

 

 

本業に専念できるMOTUオーディオインターフェイス

2022年2月現在、新型コロナウイルスは日々感染者数国内過去最高値を更新しており、当分その猛威を奮い続けることでしょう。

通信システム・5Gの普及も相まって、今後ナレーター・声優界において「宅録」というスタイルはもっと市民権を得てくるはずだと確信しています。

これから宅録環境を整えようと思っているあなた、宅録できるようになっておいた方がいいんだろうけど、難しそうで良くわからない…と二の足を踏み続けてきたあなた!

難しいセッティングに煩わさせられることなく、本業の「文字を読む」ことに専念するためにも、MOTUのオーディオインターフェイスを検討してみることをお勧めします。

 

葵井歌菜 (声優・ナレーター・ドラマー・歌手)

 

 

ナレーターとしてキャリアをスタートさせ、これまでにUNIQLO・日本マクドナルド・EPSONをはじめとする数々の企業のCMナレーションやVPナレーションを担当。ACC TOKYO CREATIVITY AWARD ブロンズ賞受賞。また、日本テレビ系列「ワケあり!レッドゾーン」「カズレーザーと深掘り熟女」などの番組ナレーターを務める。一方、「モンスターストライク」「ロードス島戦記」などのアニメ・ゲーム・吹替などでは声優としても活躍。さらに、「ポケットモンスター」シリーズをはじめ数々の作品に歌手としても関わり2019年には渋谷スクランブルホールにてドラマーとしてもデビューするなど音楽活動も積極的に行なっている。

 

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