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TRIDENT AUDIO 80B 500 Series EQ レビュー by 鈴木Daichi秀行

鈴木Daichi秀行、この記事を読むであろう層の方々は、この名前を見たことない人はいないのではないだろうか。多くのアーティストと共演し、機材にも精通しているアレンジャーであり、プロデューサーである。自宅スタジオに膨大な機材を所有、使用して、たくさんの音を作ってきた鈴木さんだからこその視点で意見や感想が多く語ってもらえた。

500シリーズに限らず、EQの導入を迷っているクリエイターには参考になるだろう(後日談、鈴木氏は80B 500Series EQを実際に購入いただきました)。

 

TRIDENTのコンソールをお使いになられたことはありますか?

昔に触ったことがある気がしますが、なかなか見かけないですよね。今回は、ギター、ベース、ドラムなどのトラックで一通り試してみました。

 

使ってみた印象はどうでしたか?80Bの方から伺えますか?

実は、これ気になってたんですよね。使ってみて、想像通りの音をしてました。

印象としてはざっくりした感じですよね。ギターアンプのトーンコントロールの延長線上みたいな…あそこまでざっくりはしてないですけど(笑)。

見るからにわかりやすいじゃないですか(モダンなタイプのコンソールとは異なる)レガシーの卓っていうか….EQらしいEQっていう感じがしますよ。単純にここを持ち上げたいなっていうところがちゃんと上がってくれますしね。

今って、プラグインでものすごく細かく調整できるじゃないですか、だからアナログEQに求められる部分って、素早く“この辺りを上げたい”みたいなのを分かりやすく調整できることだと思うんですよ。レコーディングだと音決めにそんなに時間をかけられないので、ギターやベースなどの音を作っているときに“もうちょっとこの辺が出てほしいな”っていうときにざっくりと上げておいて、細かいところは録音した後にプラグインで調整するっていうことができるのでちょうどいい感じがしますよね。Qが広いので、そういった大まかな音作りをしてレコーディングするイメージでしょうか。

 

 

この音色に合うなって思った音は感じましたか?

ギターの中域の鳴り方が、より”楽器っぽい”感じがしますよね。音が前に出てくる感じがします。値段も手頃だし、宅録をやってるギタリストやクリエイターの人たちが増えてきてるから、そういう人たちに受ける気がします。

 

A-Rangeの方はいかがでしたか?

こっちの方は音にキャラクターが付いていますよね。さっきのよりもっと高域がきれいに伸びる感じで、より精密な感じがします。ドラムバスの高域を上げたりすると金物がスッキリ抜けてくれてくれますね。

それと、ボーカルにも良いと思いますね。音が上品な感じがします。A-Rangeの方が精密に、ここのポイントだけ突きたいっている音作りができる感じで使えます。A-RangeはQが狭いこともあって、狙いたいところをピンポイントで狙えますね、そしてフェーダーが付いているのが独特ですよね。ハイパス/ローパスの両方が付いているのもいいですし。

A-Rangeの方がソースは選ばずに、より作り込んでいくのに向いていると思います。4バンドなんですけど、各バンドごとに4つの周波数が選べるようになっていますが、帯域に関しては、それぞれちょうどいいところに設定されていると思います。ボーカルに使いたい帯域とかエアー感を足したいときに使う帯域はカバーされているから十分だと思いますよ。

 

 

この価格帯になると他社製品のEQモジュールと同じレンジに入ってきますが、あえてA-Rangeを選ぶとしたらどんな点でしょうか?

そうですね、たしかに現行の他社製品もこの価格帯にありますよね。A-Rangeはドラムやギターに良いのかな….アコギにも使いやすそうですね。きらびやかなサウンドに仕上げたいならこれを選びますかね。

あと、音が前に出てくる感じとかはデジタルでは出せないので、どうしてもアナログ機材が必要になりますね。あとはドラムに通してもきらびやかさが加わる感じで、音が上品なのが特徴です。

それと2台用意して、ステレオでつかって、ドラムバスとかピアノに使うと、さっき言った品の良さとかきらびやかさがより活きると思います。

 

EQを選択する時ってどんなイメージで選択していますか?

単純にキャラクターが付くっていうのがありますね。それと選択肢が少ないものの方が使いやすいですね。その方が音決めしやすいんです。先ほども言いましたけど、ここをこうしたいっていうピンポイントでの細かい調整はプラグインでもできるんですよ。

レコーディングするときに求めるとすると、中域が出たらいいなとか、引っ込めたいなとか高域が伸びたらいいなっていうところをサクッとできること、そしてアナログにはそれぞれに質感みたいなものとかキャラクターがあるので、それを加えたいなというのがありますよね。ウチにも色々アナログのEQはありますけど、そのために使っています。TRIDENT AUDIOのEQにも当然キャラクターがありますから、これはこれで面白いと思いますよ。

 

 

最後に全体的な感想をお聞かせいただけますか?

80Bの方は使い方が分かりやすいので結構広い層に受けそうな気がしますね。積極的に音作りしていけるイメージです。A-Rangeの方は、ちょっとクセがあるので、それが良い人には気に入られると思います。Q幅が狭い感じするのでピンポイントに調整したい人とか、きらびやかなサウンドが欲しい人には重宝されると思いますよ。繊細といっても、選択できる周波数帯はボーカルだったりピアノで使うときに必要なところが抑えられています。エンジニアさんだとA-Rangeの方が使いやすいって思うかもしれませんね。あと歪んだギターを前に出すときに必要な成分が出しやすいです。

この2機種ともQが固定になっているので、それが反対にわかりやすさや使いやすさとして影響していると感じました。音を決めるときに迷わずに早くできるからレコーディング時に使うのはアリですよ。あと、操作に関してなんですが、ツマミのトルク感が軽すぎず重すぎずとても良かったです。

 


 

鈴木Daichi秀行 / 株式会社Cubic Records 代表取締役

【Sound Produce、作曲、編曲、Guitar、Bass、レコーディング&ミックスエンジニア】

 

 

オフィシャルサイト

 

【プロデュース、アレンジ、楽曲提供】
miwa、YUI、絢香、家入レオ、いきものがかり、LiSA、モーニング娘。、高橋優
ももいろクローバーZ、相川七瀬、Smap、平井堅、アリス九號.、超特急
西川貴教、ガンダムSEED DESTINY

 

【Profile】
バンド「Coney Island JellyFish」のメンバーとしてSonyMusicよりメジャーデビュー。近年はサウンドプロデューサーとしてバンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かし活動する傍ら新たな才能を求め新人発掘、育成などにも力を入れ自社スタジオ【Studio Cubic】を活動拠点として自身の音楽レーベル【Studio Cubic Records】から発売された「Non Stop Rabbit」のアルバムはオリコンデイリー1位となった。

 

 

 

 

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