私はYouTubeで活動しているバーチャル語り手、千夜イチヤと申します。いわゆる「Vtuber」というやつです。みなさんは聞いたり見たりしたことはございますでしょうか?
もしくは、これを読んでおられる方の中にはご自身もVtuberです!という方もいらっしゃるかと思います。
当ページの目次
自己紹介
さて、千夜イチヤをご存知ない方のために簡単に自己紹介させていただきます。
私は、日頃ストレス社会で眠れぬ夜をお過ごしのみなさんに、明日を生きる活力や癒しをお届けするために活動をしています。主に雑談やゲーム実況、ASMR、企画やバラエティ番組を配信で行っており、いつでものんびり訪れることができる居酒屋のような雰囲気が特徴です。
そんなVtuberが本日ここで何をお届けするのか?というと、「MOTU」というメーカーからでているオーディオインターフェイス「828」と、付随するミキサーソフト「CueMix5」のおすすめレビューです。
「歌や音楽の活動をメインでしていないVtuberのレビューなんて信頼できるのか?」という方も、もちろんいらっしゃることでしょう。私自身も、自分は音楽に関しては素人であると思っています。
しかし、活動と共に機材代に費やしてきて約4年…。その間、独学や音響に詳しい方からのアドバイスもいただきながら試行錯誤してきましたので、そんな素人ながらの足跡を基にした視点で、こういった機材に触れるのが初めてな方にもおすすめできればと思っております。
毎年機材代に100万消えて…アレ…?
この記事をぜひ読んで欲しい人は…?
こちらの記事を執筆するにあたって、私は「MOTU 828」と「CueMix 5」のレビューを依頼されたわけですが、依頼時に率直に感じたことがあります。
是非こちらの商品をVtuber含む配信者のみなさんにPRしてほしいというものでしたが…。
それは「いやVtuberで誰が買うねんコレ!」です。
MOTU 828というこのオーディオインターフェイスは28in 30outの1Uラックサイズのオーディオインターフェイスです。
これがどういうことかというと、「マイクなどの音を入れることができる入り口が28個あり、PCからの音をスピーカーや別の機器に出力できる出口が30個ある」というスペックの持ち主ということです。
対して、基本的にVtuberにとって必要なオーディオインターフェイスは、入り口は2個あれば十分に事足りて、出口も2〜4個あれば基本的には大丈夫というケースがほとんどです。
そう、MOTU 828はシンプルに一般的な用途としてはオーバースペックすぎる商品なのです。勿論そのスペックに応じて値段も上がります。こんなん買ってるVtuberいるんか?って思う方もいるかもしれません。
いるんだな…ここに…。
※これは今回の依頼でいただいたものではなく、自費で購入しているものです。
実際828を手に入れてから、活動のあらゆるシーンで大活躍してくれるようになりました。そんな経験談をもとに、
- これからVtuberを始める人
- 他の人よりワンランク上の配信設定にしたい人
- 1つの機材であらゆる活動に柔軟に対応できるようにしたい人
- 純粋に機材の話を聞くのが好きな人
こんな方々にわかりやすいように、Vtuber活動に必要な標準的な使用方法や、実際に私がどのように活動に使用しているかということを書いていきます。参考になれば幸いです。
Vtuber配信するための機器、環境、条件や設定について
オーディオインターフェイスってなに?
Vtuber活動をするにあたって、基本的に配信においても動画においても必要になるのは「声をPCに取り込むこと」になります(本記事はスマホで活動されている方向けではありません、ご了承ください)。
PCにマイクなどを通じて音源を収録するには「オーディオインターフェイス」が必要になります。オーディオインターフェイスの役割は「マイクを通じた音源(アナログ)をPCが読み込める音源(デジタル)に変換して入力すること」と「デジタル音源をアナログ音源に変換して出力すること」です。
マイクから入力された音をPCに取り込むには、小さなマイクの入力音をPCに取り込めるレベルまで増幅してあげる必要があります。オーディオインターフェースをご利用になった方なら、1回でも「ゲインを上げる」という言葉を聞いたことがあったり、実際に使ってみたこともあったりするのではないでしょうか。
このようにマイクからの入力音を増幅するパーツを「マイクプリアンプ」と呼びます。また、アナログとデジタルの音源を変換するパーツを「ADコンバーター」や「DAコンバーター」と呼びます。
これらのパーツがあることで、マイクを通じてPCに音を取り込んだり、PC内のデジタル音声をイヤホンやスピーカーで聞くことができるようになるのです。
そして、オーディオインターフェイスと呼ばれる機材は基本的にこのパーツを有しています。
「ならどれを買ったって同じじゃないか?」と思う方も勿論いることでしょう。既にオーディオインターフェイスをお持ちの方は、お使いのものでも十分に活動で使うことができていると思います。
しかし、活動においての特定のシーンでは「この機能があった方が便利!」「これがあるともっとやれることが増える!」ということも多くあります。そして、多機能なオーディオインターフェイスはそれらに柔軟に対応することができるのです。
そこで、その中でも配信活動で一番キモになる「ループバック」について説明します。
「ループバック」機能とは?
Vtuberや配信者をしていると「ループバック」という単語を聞いたことはありませんか?
ループバックとは、PC上で再生した音をマイク音声と一緒にPCに入力できる機能です。
これがどういう機能かイメージがつかない方も多いかもしれません。または、名前だけは知ってたけど実際のところはよくわかってないという方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために少し機能の説明をいたします。ご存じの方は少し飛ばしてお読みください。
みなさんは配信や動画の収録にOBS Studioを利用している方がほとんどだと思います。
そこで、試しにPC上でカラオケ音源を流しながら歌ってみた様子をOBS Studioで録画してみましょう。
このとき、デスクトップ音声とマイク音声は別々に入力します。
そして、その録画した音声を聞いてみてください。歌声とカラオケの音源がズレて録画されてしまったと思います。音源に合わせて歌ったのにどうしてでしょう?
その理由は、マイクから入力される音とPC内部の音はアナログとデジタルの変換をする際にそれぞれでラグが発生するため、そのままOBSに入力してしまうとズレが発生してしまうのです。
ですが、ここでオーディオインターフェイスが「PC内部で発生した音をオーディオインターフェイス内で入力音源として扱い」「マイク音声と同期させてPCに入力」させることで、マイク音声とPC音声が合わさった1つの音声トラックとしてOBSに入力ができるのです。
勿論この音声トラックはオーディオインターフェイス内でズレないように同期されているので、同じように歌ってもズレて録画されることはありません。
この仕組みのことを「ループバック」と呼びます。
簡単に言うと「マイクとPCの音源がズレない1本の音声トラックを作る機能」ですね。
最近では、様々なオーディオインターフェイスにループバック機能が備わっています。
「配信者にはループバック機能は必須」という言葉もよく目にするようになりました。
確かに前述した通り配信者にとってはキモとなる機能ですし実際あると便利な機能ですが、不要なケースもあります。
例えば、ゲーム実況しかしない方であれば、なくてもよい機能かもしれません。
昔はデスクトップ音声を録音・配信するにはループバック機能(かつてはステレオミキサー = ステミキ機能とも呼ばれてました)が必須で、オーディオインターフェースで設定するかPC側で設定をする必要がありました。
しかし、現在はOBSなどの配信ツールさえインストールしてしまえばデスクトップ音声を簡単に録音・配信できるようになりました。Discordなどの通話ツールを使ってVCをしながらするゲームでも、OBSさえあればゲーム音源とVCの音源を混ぜて録画・配信ができます。それだけであればループバック機能は不要とも言えます。
逆に、ゲーム音源とVCの音源を分けて録画・配信をしたい方や、歌配信をしたい方など、音声関係を柔軟に対応させたい人には必須の機能となります。
ループバックの他にも、828を取り入れることで活動で柔軟に対応できるようになるいくつかの例を紹介してみましょう。
マイクの音質を上げたい
「憧れのあの人の配信の音質は自分とは違ってすごくよく聞こえる」と感じてマイクをグレードアップしてみたものの、そこまで変化がなかった…という経験がある方もいるかもしれません。
前述した通り、オーディオインターフェースには「マイクプリ」や「ADコンバーター」といったパーツが備わっています。これらのパーツは、オーディオインターフェイスの価格が上がるにつれて性能が良くなる傾向にあります。MOTUから出ているオーディオインターフェイスは、勿論これらのパーツにもこだわって開発・製造されていますので、オーディオインターフェイスもグレードアップすることで更に高音質な環境に近づけることができます。
FPSでもっと強くなりたい
Vtuberや配信者のみなさんの中でも、昨今FPSゲームが大きく流行っているかと思います。
FPSゲームで大事な要素の1つとして「音」があります。視覚情報だけにとらわれず、音で敵の位置や武器の種類など戦局に関わる大事な情報を知ることができます。
ですが、その音がなかなか聞き取れずに敵の位置がわからないまま負けてしまう…なんて経験を持っている方も多いのではないでしょうか。
e-sportsのプロの方々はキーボードやコントローラーなどのデバイスにこだわっているのはもちろん、ヘッドホンやアンプにもこだわっている方が多いです。
この「アンプ」というのがPCの音をアナログに変換するためのデバイスなのですが、もうお気づきの方も多いのではないでしょうか。
そうなんです、この機能はオーディオインターフェースにも組み込まれている「DAコンバーター」によるものなのです。
つまり、ゲーム用にヘッドホンアンプやミキサーを購入するよりも、配信をしている人ならオーディオインターフェイスをグレードアップした方が効率が良いと言えます。
また、828の音を調整するミキサーソフト「CueMix5」にはイヤホンやヘッドホンで聞くときに特定の周波数を削ったり増幅したりする機能(EQ = イコライザー)を持っています。銃撃音や敵の足音などを良く聞こえるように設定することも勿論可能です。
ゲーマー視点でかなり詳しいことまで書いてくださっている記事がこちらですので、是非こちらも読んでみてください。
配信に入れる音を自由自在にしたい
配信をする際に「この音は配信に入れたいけど、この音は入れたくない」となったときに、どのように設定すればいいかわからなくなってしまった経験、ありませんか?
最近ではOBSでもソフトウェアごとに音声を入れることができるプラグインもあるので、それらを活用すれば解決もできます。
しかし、PCのスペックによってはうまく音が入らないことや音がプツプツ途切れてしまうこともあって、更に困ってしまった方もいるのではないでしょうか。
また、ソフトウェアによっては商用利用ができないものも多く、Vtuberのイベントなどで使用したいのに使用できなくて、という声もよく聞きます。
そんなときに、828のオーバースペックが役に立ちます。
「マイクなどの音を入れることができる入り口が28個あり、PCからの音をスピーカーや別の機器に出力できる出口が30個ある」おかげで、PC内部の特定の音を一旦オーディオインターフェイスから出力し、ケーブルをつないで再度オーディオインターフェイスに取り込みます。
勘のいい方はお気づきになったかもしれません。これはループバックと同じことを物理的に行っているのです。
すると、今までOBS上では「デスクトップ」と1つにまとまっていた音も、以下のように細かに切り分けることができるようになります。
こうすれば、例えば「VCの音だけ入らないようにしたい」とか「同時視聴配信でブラウザの音は入れたくないけどVCの音は入るようにしたい」といった、配信で流せる音を自由自在に操ることができます。
更に応用した話をすれば、これらはOBSを利用しないシーンでも役に立ちます。
例えば、Vtuberのイベントへの参加です。
これらはOBSを利用しないケースも多く、DiscordなどのVCツールを利用して音声をイベント会場に届けることがほとんどです。
その際にループバックの設定のせいで「VCで繋がっている他のVtuberの音声も一緒にマイクに入ってしまって、BGMと一緒にVCの音声が二重に聞こえてしまう」といったことがよくあります。
そのせいで「BGMも流したいのに流すことができない」「会場側のマイクの音をDiscordで聞くたびにループバックを切らないといけない」といった不自由が発生しがちです。
そこで、実はこの問題もPC内部の入力の音を細かく切り分けることで、同様に解決することができてしまいます。
勿論、オーディオインターフェイス内の処理を利用しているのでPCには負担がかからず、音がプツプツ途切れてしまう処理落ちなんてこともありません。
歌ってみたの収録や歌配信をもっとリッチにしたい
Vtuberや配信者のみなさんの中には、歌の活動をメインにしたい方が多くいらっしゃると思います。
歌ってみたの収録や歌配信をする際にも、スタジオなどに行かず自宅で収録や配信をする場合にはオーディオインターフェイスは必須です。
歌配信をするならこれ!という巷で定番のオーディオインターフェイスを使っている方も多いのではないでしょうか。
確かにあの機材も大変便利で優秀なものだと思います。
しかし、活動を続けていく中で「もっとクオリティを上げてみたい」と考えて、意を決して新しいオーディオインターフェイスをいざ買い換えてみると、今までやっていた歌配信の設定を大きく変えなくてはならず…。
結局、どのように設定したらいいかがわからずに、歌枠だけは元の定番機材に戻るという話もよく聞きます。
ですが、せっかくなら他の人よりもリッチな配信にしてみたいですよね。
ちゃんと歌声のノイズを切って、コンプとEQをかけて、そしてリバーブもきれいに入れたい…けれど歌声にそれらの設定をすると、今度はプラグインごとの遅延の設定が面倒くさい…。そんな時にDAWを利用した歌枠設定がとても楽なのですが、なかなかハードルが高いのと機材のスペックが足りなくてうまくできないこともあります。
そんな設定を828とCueMix5は楽に叶えてくれます。勿論、歌ってみたのための収録のための機材としても優秀です。
このように、Vtuber活動でやれることが大きく広がる「MOTU 828」を、千夜イチヤがどのように利用してるのか是非紹介させてください。
千夜イチヤがMOTU 828を選んだ理由
私はもともと別のメーカーのオーディオインターフェイスを使用しておりましたが、10年以上前に発売されたものを中古で買い取ったものです。
こちらの機材を使用するためのミキサーソフトを使いたくて購入したものですが年季が入ったものでしたので新調したいと考えており、しかし同メーカーの機材に新調しようとすると3、40万はしてしまうことに悩んでいました。他の同スペックの機材でも同様の金額感でしたので、流石に手を出しにくいと考えておりました。
そんな折に、MOTUからこの828が発売されると聞きスペックを調べてみたところ、上記の機材たちと似たようなスペックであるにも関わらず価格は17万近くと破格の安さだったのです。
これは果たしてどうなんだと少し怖くなり、他の方のレビュー動画などを見漁りもしました。しかし、活動当初にはMOTUのM2を使用していた頃の性能の良さも感じていたので、最終的にはこのコスパのよさそうな機材にチャレンジしてみよう!の精神で購入してみました。
まず率直に感じたのは、音の良さでした。
イヤホンから聞こえる音が心地よくて、特に低音の聞こえが良くなったと感じました。
私の場合はASMRもよく聞くのですが、聞こえる環境音や物音の心地よさは低音のバランスが良いことだと考えていて、それがこの828で聞くと大変心地よかったのです。
それだけでも買ってよかったなと感じたのですが、828を使うことで色々な機材を828を中心に組みやすくなったというところが、大きく魅力に感じました。
千夜イチヤの使用機材と接続イメージ
828はループバック系統が1つのため、ADATで物理的に戻してあげることやDAWなどを活用する必要が生じる場合もありますが、工夫次第でやりたいことが実現できる良い機材だと思っています。
MOTU 828(CueMix 5)の活用方法
では、実際にどのように828(CueMix5)を活用できるか紹介していきましょう。
機器接続イメージ
・雑談、ゲーム実況
シンプルな接続方法
まず、シンプルに接続したらどうなるかを見てみましょう。
このように、MOTU 828をPCとつないで、その音声をOBSに入れれば録画や配信ができるようになります。
この接続方法はループバックなど一切使用せず、純粋にPCにマイク音を入力しOBS上でデスクトップの音声と混ぜて録画や配信をするときに使います。
OBS側でマイクの音声は入力デバイスから、デスクトップの音声などは出力デバイスから選択するだけです。
音のズレがあるといってもほんの少しのレベルなので、通常の雑談やゲーム配信、録画において不自由することはありません。
それだけではなく、CueMix 5のマイク・ライン入力にはノイズゲートやコンプレッサー、4バンドEQ、リバーブも実装されていますので、CueMix 5上で入力音を調整することができます。
CueMix 5に搭載されるダイナミクス・エフェクト
CueMix 5に搭載される4バンドEQ
勿論、OBS上でマイクの音声に対しOBSに内蔵されているノイズ除去やコンプレッサーなどのエフェクトをかけることもできますし、それだけで綺麗な配信になります。
ですが、CueMix 5上で設定すればオーディオインターフェイス内で音声処理がなされ、PCへの負担が減ることになりますので、処理の重いゲームを実況したい人にも向いています。
また、前述したようにイヤフォンで聞く音には3バンドのパラメトリックEQをかけることもできますので、より目立たせたい帯域の音や逆に耳に痛い音の聞こえを調整することもできます。
イヤホン/ヘッドホンやメイン出力などのアウトプットにかけられる3バンドEQ
ただ、格闘ゲームやFPSなど映像と音の少しのズレが配信を見返していて気になるという方は、次のループバックを使用した方法がおすすめです。
ループバックを使用する方法
828でループバックを使用するには、まずCueMix 5でどの出力チャンネルに出ている音をループバックするか設定をする必要があります。
ループバックチャンネルを利用するにも、CueMix5の設定画面を確認する必要があります。
「Enable Windows Audio Streams」にチェックが入っていると、Windows内で入力デバイスとして選択できるようになります。
ここで「Loopback in 1-2」にチェックを入れると、OBSの入力デバイスの中に同名のデバイスが出てくるので、それを選択するとループバックされた音が入るようになります。
ループバックする音を選ぶ方法は以下の通りです。
もしLoopback Sourceに「MAIN 1-2 MIX」を指定した場合は、左のタブで「MAIN 1-2 MIX」を選択し、右側でループバックしたい出力チャンネルのフェーダーで音量調整することで、ループバックする音の選択や音量調整が可能です。
ループバックを利用した他の応用も勿論可能です。
例えば「ゲームの音は配信に流したいけど、VCをしている相手の音声は配信に流したくない」というようなことがあるかと思います。
その場合にまずしなくてはいけないことは、「配信に乗せる音とイヤフォン/ヘッドフォンから聞く音を分ける」ということです。
まず、配信に乗せる音は前述した通り「Loopback in 1-2」に設定します。
このとき、「MAIN 1-2 MIX」で配信に流す音声を設定する必要がありますが、ここで工夫が必要です。
なぜかというと、このままだと「ゲームの音声」と「VCの音声」は同じ「MAIN 1-2 MIX」に流れているため、別々に設定することができません。
そこで、「ゲームの音声」と「VCの音声」を別々に出力するために、CueMix 5上である設定をします。
設定で「Mix USB Channels」を「Additional」に設定することで、PC内部の出力チャンネルを増やすことができます。
ここで増やされた出力チャンネルを使って、ゲームの音声出力先やDiscordの出力先を別々に設定します。
そして配信に流したい音声だけ「MAIN 1-2 MIX」のタブで該当出力チャンネル(ゲーム音声)のフェーダーを上げれば、配信に流したい音声の設定が完了です。
次にイヤホン側で聞きたい音声の設定です。
本体のイヤホン端子にイヤホンを挿したら、それに該当するチャンネルを左のタブで選びます(上記画像では「PHONE 1 MIX」を使っていることを想定しています)。
このときに、ゲーム音声とVC音声の出力があるチャンネルのフェーダーを上げれば、イヤホンでは配信に流れている音とは別に、必要な音を聞くことができるようになります。
この方法を活用すれば、例えば前述したような映画やコンテンツの同時視聴で一部の音は配信に流したくないけど、コラボ相手の音声は配信に流したい。
イベントなどでVCで繋がっている他のVtuberの音声はマイク音声に乗らないようにするというような柔軟な対応ができるようになります。
私が個人的にやっていることは、ホラーゲームなど怖いゲームをしているときに、どうしてもBGMやSEで怖くなってしまうことがあるので、配信に流れないようにこっそり明るいBGMを流しておくこともあります。とても便利です。
歌配信をする方法
828とCueMix 5で歌配信をするにはいくつかの方法があります。
CueMix 5で一番簡単に歌配信をする方法は以下の通りです。
前述した通り、マイク音声にはノイズゲート、コンプレッサー、EQ、リバーブをかけることができます。
CueMix5上でそれらの設定をし、PCでカラオケ音源をループバックさせて、OBSに入力することができます。
もちろん、リバーブのかかった自分のマイク音声は自分のイヤフォンでも確認ができます。
リバーブの設定も細かくできるので、好みの音を作ることが可能です。
また、他にも828のマイク入力にはセンドリターン(インサート)端子と呼ばれる外部の機材と接続できる端子があります。例えば、既にアナログのコンプレッサーやEQ、リバーブなどの機材を持っている場合は、それらと接続することが可能です。
それらを接続すれば、前述したようにPCに流れる音声をループバックすることで、マイクの音声には外部機材でエフェクトをかけつつ、配信に載せることができます。
他にも、OBS上でマイク音声にVSTプラグインでエフェクトをつけることもできます。
しかし、この場合はマイク音声とPCから流すカラオケ音源との間にラグが発生してしまいますので、別途遅延を計算する必要があります。
VSTプラグインを設定することができるWavesの「StudioRack」のようなソフトを使うと、プラグインを使用することで発生する遅延秒数がわかるので、その分だけ映像やPCの音声をOBS上で遅延させるなどのやり方がで調整ができます。
千夜イチヤのMOTU 828(CueMix 5)の利用方法
では最後に、千夜イチヤはどのように828を使用しているかについてご説明します。
上記の図全てをご説明するわけではないので、ご了承ください。
PC、VCの音は分けてOBSへ入力
ループバックを使用する方法のところで、デスクトップ音声とVCの音声を別の出力チャンネルで管理する方法についてご説明いたしました。
しかし、これらをOBSに入れようとすると必ず「Loopback in 1-2」を通す必要があり、CueMix 5上で音量調整はできるものの、OBS上では音量調整ができません。
OBS上で分けて音量管理をしたかったため、千夜イチヤの場合は以下のような方法を取っています。
PC音声とVC音声をADAT Bの1-2、3-4にそれぞれ出力します。そして828のADAT Bの出力から物理ケーブルでADAT Aの入力につなぎます。
そうすることで、ADAT Aの入力の1-2、3-4にそれぞれPC音声とVC音声が入力されるようになるので、それをOBSの入力デバイスに設定すれば、別々に管理することができます。
ケーブルさえあればこのように物理的にループバックさせることもでき、ADATには全部でステレオで4チャンネルあるので、他にも個別に入力チャンネルとして管理したい音源を分けることが可能になります。
DAWを経由してOBSへ入力
また、私は歌枠の場合はOBSで配信用の音声を整えているのではなく、DAWソフトを経由してOBSへ音源を入力しています。
DAWソフトを使用している理由は前述したVSTプラグインを使用したいからなのですが、OBS上で遅延秒数を設定しなくても、DAWの方でプラグインの遅延秒数に応じて自動補正して音を合わせてくれるので、余計な設定が不要になるからです(とはいえ、プラグインごとに遅延秒数の大小の差はあり使用にも限りはあります)。
DAWでまとめた音を出力するのにループバックをする必要があるのですが、ここで少し厄介なのは、828のループバック・チャンネル一系統の取り扱いに関してです。
一方で、DAWでまとめた音をOBSに入れるにはループバックをする必要があります。
しかし、カラオケ音源をPCの中で鳴らしてADAT Bから出すのに既にループバックを使用しているため、ここでもまた物理ループバックの出番になります。
空いているADAT B 5-6にDAWでまとめた音を出力できるようDAW側で設定をし、ADAT A 5-6で受け取ります。そして、OBSでADAT A 5-6を入力デバイスとすれば、DAW側でまとめた歌枠用の音源が配信で流れるようになります。
手間暇はかかりますが、このような手法を利用することで他の人よりもリッチな歌枠にすることが可能なのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
こういった機材レビューを私自身がnoteにつらつらと書くことはあるのですが、このような形で正式に機材レビューをすることが初めてだったため、執筆はとても緊張しておりました。
しかし、私自身Vtuber活動をしていて他のVtuberからの機材や配信設定の相談を受けることも多くなっておりました。
そういった中で多くの方が持っていた意見として、シチュエーションごとの具体的なソリューションが見つからないだとか、誰に相談したらいいかわからないだとかが散見されるようになり…。
今回記事の依頼を受けたときには「私なりに、Vtuber活動で活用できるシーンやソリューションを具体的に書いてみよう」と思って書かせていただいた次第です。
「こんなことしたかったんだ!」と活動の助けになったり、新しい知見が広がって楽しめたり、Vtuberの裏側を知って嬉しくなったり、みなさんにとっての何かに繋がってくれたならば幸いです。
これをきっかけにより楽しい活動を、多くのVtuber、そしてファンのみなさまにお送りできますように。
千夜イチヤ(プロフィール)
癒しと笑いを届けるバーチャル語り手として活動中。
雑談、ゲーム実況、ASMRの他視聴者を巻き込んだバラエティ企画を実施する傍ら、それらを実現するに必要な機材や技術に関するノウハウを発信している。
YouTube:https://youtube.com/@senya_1ya