普段はアナログのEQは使われていますか?また、80Bから試して頂きましたがどんな印象でしたか?
このスタジオのコンソールがAPIで、コンソール内に500シリーズをマウントできるシステムなんです。いままでハードウェアのEQは、APIの550Aか560しか使っていなかったんですが、550Aの場合、ノッチ式のスイッチなのでゲインが2dBずつ上がっていくんですよ。それはそれで大雑把で良さはあるのですが、80Bのような連続可変ができるものはウチのスタジオにはないので調整しやすく感じましたね。このタイプのEQがあった方がいいなと思いました。APIと比べると、かかり方が派手というか明るい感じがしました。
エレキギターに使用していただきましたがどのような感じのセッティングを試されましたか?
レコーディングしたままの状態だと、オケに対してちょっと奥まって聴こえていたのでオケに負けないように人間の耳に聞こえやすい帯域をちょっと突いて(ブーストして)みました。ベースも意外とブーストしてますね。120Hzのボタンを押して目盛を3時くらいにしています。あとは8kも少し上げています。EQオフの時よりも音が前に出てきますね。テンションが上がった感じがします。
80B-500EQのフロントパネル
普段、ギターの音作りはどのようにされていますか?
普段はアンプできっちり音を作ってコンソール側のEQはフラットなことが多いんですけど、アンサンブルの中でどうしても音が決まらないときに必要な帯域をEQで調整することが多いです。その場合、現在使っているEQでは中域だと800Hzか1.5kHzの固定で微調整は出来ないですが、80Bはスムーズに調整できるのでアンプのキャラクター活かした音作りができますね。
操作性はいかがでしたか?
今まではプラグインで済ませてしまうことが多くて、ハードウェアのパラメトリックイコライザーは初めてに近いくらい触った経験が無いんですけど、全然違和感なく触れましたね。80Bのかかり方が派手なのかハードウェアはみんなこうなのかとか思ったんですけど、この掛かり具合は80Bのものですね。80BにはQがないので、Qがあればもっと細かく調整できるんでしょうけど、迷い出すときりが無くなってしまいそうなので、これはこれでいい感じに調整できて満足です。
今回、FUZZを使っているギターの音に使ったんですけど、歪んだギターの音ってオケに埋もれがちでミックスが難しいんですよね。そういう時、音を前に出さなきゃいけないとときにこういうのがあると便利ですよね。
他の音色で試してみたいなっていうのはありましたか?
どんな音色にでも合いそうですよね!きっと合わない音色無いんじゃないですかね?今やってるプロジェクトで言うとスネアに使ってみたいですねー!(値段を聞いて)本当ですか!?ウチに入れようかな!?今注文できますかね!?激安じゃないですか!その値段だったらこれは買いですよ!めっちゃコスパ良いじゃないですか!侮れないですね~。
~話しながらパッチングし直し、キックとスネアにインサートして試聴~
ガラっと変わりますね~、効きが鋭い!楽しいです。これは本気で欲しいかも!かかり方が分かりやすくていいですね!キックもスネアも簡単に前に出てきますね~、いいなぁ。
低域の膨らみ方とか好きな感じです。これは使えるな…使っていて反応がいいので楽しいですね。さっきから“いいなぁ”しか言ってないですね、オレ。
でも本当に良いです。ノブを動かしていくとどんどん表情が変わっていきますね。今、キックの音を調整しながら話してますけど、ハイを上げるとビーターの音が強調され、ローだと胴の音をコントロールできますね。キックの太くしたいところにぴったりくる感じです。120Hzってベースに使ったらブリブリ行けるかもしれないですね。楽しみだな。
~ベーストラックへインサートしてみる~
スピーカーから聴こえてほしいベースの音の“ズン”っていう成分がコントロールできますね。音に深みがでるなぁ…立体的になりますね。そして音像が大きくなる。さっきから全部ブーストする使い方ばっかりしちゃってますけど、ホントに良いです!コスパが良すぎますね。本気でこれ欲しい!
A-Rangeの印象はどうだったでしょうか?
筐体が大きいですねぇ…(笑)。スロット2つ分使っているので、余裕があるレイアウトで使いやすそうです。操作が分かりやすいし音も高級感がある印象です。80Bと同じメーカーのEQですけどまったくの別物ですね。A-Rangeは音がもっと繊細な感じがします。作れる音が違うので、両方持っていて使い分けるのもいいかもしれないですね(笑)。
使い方としては、一番最初にギターに使ってみたのですが、フラットな状態からゲインを少しだけ上げて、その後に周波数のセレクターをカチカチ回してオケからギターが抜けてきて強く聴こえてくる周波数帯を探し当てたら、それをちょうどいい感じになるよう再度ゲインを調整してみました。フェーダーが大きいので、微調整がしやすくて目指しているところのジャストな位置で止められました。
各4バンドあって、コントロールする周波数が4つで固定なんですけど、これもよく考えられているようで、低域から高域までどの楽器に対してよく 効く周波数になっていますよね。ボクはベースだったら100Hzとか80Hzとかの辺りをよく使うんですけど、ちょうどそこがありますし。ハイパス、ローパスも3段階の中から選べますが、これもちょうど必要とする周波数なんですよね。この辺りはよくできているなって思いました。
そして、各帯域のコントロールが縦に並んでいるので、自分が今、どこの帯域をコントロールしているかわかりやすいですし、さっきも言いましたけどゲインがフェーダーでコントロールできるので繊細な音作りができますね。フェーダーだとを微調整しやすく、ほんの少しだけ動かすだけでタッチのニュアンスの出方が変わったり、音の表情が変わるので、かなり追い込んでいけると思います。
下の方の帯域で調整するとボディの鳴り方も変わってきたりしてスゴいです。あと、A-Rangeの方がEQのかかり方に品があるかかり方をしますね。
A-Range 500EQのフロントパネル
~ストリングスで試しながら~
ストリングス・セクションのチェロにも使ってみてるんですけど、15kHzの辺りをちょっとだけ持ち上げてみたら、ニュアンスがより豊かになりましたね。より生々しいサウンドになりますね。
A-RANGEは、80BよりもQが狭いんですかね?80Bよりも帯域がピンポイントで持ち上がる気がしてます。これはいいですね、音が立体的になって抜けてきてくれますね。存在感が増してくれます。優秀だなぁ。
この効果はプラグインでは出せない存在感ですね。歌中の後ろでかすかに鳴ってるストリングスだったらプラグインでいいのかもしれないですけど、ゴージャスなストリングスアレンジをした時などはハードウェアを使うことによって存在感や説得力が増すので、ハードウェアを使った方が良さそうですね。今回は試せなかったですが、ドラムに使ってもよさそうですね。
TRIDENTのEQを使ってみてどうでしたか?
今の時代、音楽制作の工程自体はソフトの中で完結できちゃうので、DAWに入るまでのオーディオインターフェイスだったり、プリアンプには注目していたんですけど、こういう機材ってとても大切だなって改めて思いました。
今まで、ウチのスタジオでは2ミックスにEQをかけるだけだったんですけど、今回楽器一つ一つにアナログ機材を通してみてデジタルでは得られない存在感があるなと改めて感じました。
80Bのノブを上げたときの音の豹変の仕方は魅力的で、A-Rangeの方が穏やかに変化していく感じですね。どちらもEQをかけたときの存在感は感じますね。本当に気持ちいい音が作れるのでテンションが上がりっぱなしでした。
Profile
ZENTA(ゼンタ)
小学6年生からギターを弾き始め、中学時代からは作曲も開始。
Do As Infinity Ayasa alan AKB48 MY FIRST STORY A.B.C-Z SUPER☆GiRLS 内田彩 北乃きい 戸松遥 などといった様々なアーティストに楽曲提供する。
他にも「ドラゴンボール超」の挿入歌や「ジョジョの奇妙な冒険」の主題歌の編曲、また「龍が如く」「ガールフレンド(♪)」
「オルタナティブガールズ」「オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-」「CR 真・花の慶次」などのゲーム音楽やTV音楽、CM楽曲など幅広く手掛けている。
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