お役立ち情報

Allen & Heath Xone:96 ユーザーインプレッション by Musicarus

 

1 . 概要(はじめに)

初めまして、現在福岡を拠点に活動し、DJ・楽曲製作を行っているMusicarus(ムジカルス)と申します。

今回は2000年代のDJミキサーの頂点とも言われるほど世界的に愛され今や業界標準の一角となったAllen & Heath社(以下A&H)のXoneシリーズ、そのシリーズの現フラッグシップモデルとなる「Xone:96」を発売当初より購入し、現時点に至るまで使用し続ける愛用者としてこの機材について忖度なく包み隠さずご紹介します。

 

 

 

2 . 導入の経緯

まず申し上げておきますと、私が初めて手に入れたA&H製ミキサーは今回ご紹介するXone:96ではありません。Xone:96の原型となるXone:92を2007年ごろに購入し、そのデザインと音質に取りつかれておよそ10年愛用した後、2018年にXone:96が発表された直後に買い替えました。

評判を聞いてからという手もありましたが「10年愛用したXone:92の完全な後継機」というだけで信用できるという判断での購入でした。

 

 

3 . Xone:92からの追加機能(スペック)

Xone:96は前身機種となるXone:92から受け継いだ4つのステレオチャンネルと4バンドEQ、2つのAUXステレオチャンネル、そして2つのXone:VCFフィルターを搭載している他に以下が新たに追加・変更されています。

1 . 2つのFXセンド、4つのリターンを搭載

Xone:92を使用していた際に使用者の間でよく話の種として挙げられていたのが「エフェクターを外部から繋ぎたいが取り回しが大変」ということでした。当時のA&H XoneのトータルデザイナーであったAndy-Rigby JonesとPLAYdifferentlyにて共同開発も行っている世界的DJ、Ritchie HawtinもXone:92をメインミキサーとして使用していた時はAUXチャンネルの1つを改造してエフェクターを使用していた経緯もあり、そういった点も踏まえて今回の追加点はXone:92ユーザーが抱えていた痒い所に手が届くようになった嬉しい仕様変更と言えます。

2 . 2つのAUXチャンネルに3バンド・パラメトリックEQを搭載

Xone:92にはメインのステレオチャンネルと同様に4バンドEQが据えられていましたが本機では4バンドの代わりに3バンド・パラメトリックEQが搭載されました。ボーカルや楽器、シンセサイザー、ドラムマシンなどを接続した際には、調整できる帯域を任意に変えることのできるパラメトリックEQは大きく役立ちます。

3 . VCFフィルターにハーモニックディストーション”CRUNCH”を追加

「Xoneといえばフィルター」というほど高評価を得ているVCFフィルターに追加機能としてCRUNCHが搭載されました。個人的にDJ的な使い方をする際にはあまり必要性を感じない機能とは思うものの、ドラムマシンやシンセサイザーなどを接続した場合はアナログらしい耳に攻撃的でない歪みを生み出すことのできる面白い機能となっています。

4 . 各チャンネル2系統の96kHz / 32bit 対応のサウンドカードを搭載

Xone:96ではUSBの接続端子を2系統搭載し、それぞれに96kHz / 32bit対応のDACを搭載しています。Xoneシリーズの高音質なアナログサウンドをそのままPCに取り込むことができるだけでなく、PCの音声をXone:96のアナログサウンドそのままに出力することができます。

また、Native Instruments社製Traktor ScratchのDVSに対応しており、USBを繋げるだけでDJプレイを楽しむことができます。

その他にオーディオインターフェースとしての機能も備えている(Windowsで接続の場合はドライバーが必要)ため、外部からの入力もUSBを繋ぐだけでXone:96からPCへ取り込むことができ、DJ配信などでも別途のインターフェースを必要とせず非常に簡単に設定することができます。

5 . チャンネルフェーダー/クロスフェーダーがアップデート

個人的には今回買い替えた際に一番使用して感動した点がフェーダーのアップデートです。Xone:96のチャンネルフェーダーはすべてXone:96用にカスタムされた60mmリニアVCAフェーダーが採用されており、各フェーダーはボリューム調整をしやすいように重めに設定され、クロスフェーダーは指で弾けばスルスルと動くほど軽く設定されています。これにより細やかなボリュームミキシングとクロスフェーダーによるキレのあるスクラッチやクイックなミックスにも対応することができるようになっています。

 

 

4 . 音質面

 

 

音質面についてはXone:92から大きくアップデートされ、音の解像度が驚くほど向上しています。92の時点でも当時のミキサーとしては圧倒的にクリーンな音をしたアナログミキサーだという評価でしたが、96ではそこからより明瞭なサウンドを実現しています。この感覚は「見えるから大丈夫と思っていたのに眼鏡をかけてみたら視界に信じられないほどクリーンな世界が広がる感覚」に近い視界の開き方を感じました。この音質面の向上のおかげで音のパーツをしっかり認識することができ、モニターがしやすくミックスをより高い精度で行うことが可能になりました。

わかりやすい話として、自分がイベントを行う際に持ち込んだXone:96を、普段デジタルミキサーを使用しているクラブのPAさんから「今日は音の鳴りが物凄くいいんだけど誰か設定いじった?」と確認しに来たことがあります。この話だけでこのミキサーの音の面白さが伝わるはずです。

 

 

5 . 使用例

 

 

接続例として今回は自分がどのようなセットでDJを行っているかご説明します。Xone:96にはPioneerDJ製CDJ-3000を2台、DJS-1000を1台をメインのセットとして接続しています。

外部よりエフェクターとしてMasterSounds製FXというDJ用ディレイエフェクターを接続しています。MasterSoundsでは、Xone:96に対しての接続方法をメーカー側から丁寧に提示されているのでそちらを参考に繋いでいます。FX Loopが働いているのでFX側のフィルターをマスター側にかけることができる上に、Xone:96各チャンネルのSEND 1のつまみでディレイの深さを調整することができるようになっています。

このように外部からのエフェクターが繋ぎやすくなったことでDJスタイルの幅が広がり、自分の意図に合わせてより自由度の高いプレイができるようになりました。

 

 

MusicarusによるDJセットアップ図

 

また、DJ時ミックスのスタイルについて自分の場合、基本的にEQ操作によってミックスすることはせずEQは楽曲のバランス調整をメインとしています。

代わりに2系統のVCFフィルターをミックスするチャンネルに割り振り、HPFを利用して低音域を削ってミックスをしています。VCFフィルターのキレがよく、また切れる帯域を任意にその場で調整できるので自分の好みで音を残しつつ気持ちよく混ぜることができる、Xoneの特性を活かせるスタイルです。

 

 

この方法は、今や伝説的モデルでもあるA&H社のロータリーミキサーXone:V6 / S6が各チャンネルにHPFのみを実装し低域を切ってミックスする仕様から着想を得たミックス方法で、Xone:92を所有していた時代から続けているスタイルなのですが、このミックススタイルをやりたいがためにXoneシリーズのミキサーを持っていると言ってもいいほど素晴らしいスタイルだと思っているので、ユーザーの皆さんにはぜひ一度お試しいただければと思います。

 

きわめて少数のみ生産されたXone:V6

 

 

6 . どんな人におすすめできるか?

 

 

言わずもがなかもしれまんが、DJ環境に音質を求める人には間違いなくこのミキサーを選択肢として挙げて欲しいです。Xoneシリーズの上位機種はDJミキサーとしてだけでなく、オーディオ機器として高い評価をされている側面があり、DJ用途としてではなくオーディオアンプとして購入される方も多くいます。現在のDJ機器はやはりデジタルミキサーが主流で音質も目を見張るほど向上していますが、Xone:96のアナログサウンドはそんなデジタルミキサーに慣れた耳に対しても全く別の角度で音楽のすばらしさを感じさせてくれます。

そしてXone:96は紛れもなくオールインワンなミキサーと呼べる機能を持ち、DJだけでなくそこからライブセットなどに発展させたいという方にもおすすめできる逸品です。これからDJ+αのパフォーマンスを考えている方などには間違いなくXone:96は期待に応える働きをしてくれると思います。

 

 

7 . 最後に

長年愛用し続けたA&H社XoneシリーズのフラッグシップモデルとなるXone:96はその音質、性能を持って間違いなく世界トップクラスのミキサーの一角であることを示してくれます。自分が買ったDJミキサーとして購入した。もしXone:96ほどの機能を求めないという人であれば選択肢として、Xone:96の性能にも肉薄する、バージョンアップを果たしたXone:92 Mk2の方にも目を向けてもらえたらと思います。

 


 

Musicarus プロフィール

Musicarus (OSFC / MEDAMA)
日本国内でも数少ない Jackin’ House /Disco Filter House をメインに活動するDJ/ プロデューサー。古きよきハウスを踏襲しつつも個性のある サンプリングセンスとカッティングスタイルが評価され国内外のレー ベルよりリリースを重ねている他、近年では UK Garage / 2 stepにもアプローチしており、オリジナリティ溢れる楽曲の制作を続けている。DJ においてもそのテクニックとセンスは多くの支持を集め、九州を拠点としながらも全国の様々なイベントに出演し、自身の好きな音楽とオリジナル楽曲の布教に努めている。

SoundCloud : https://soundcloud.com/mscrs
Spotify : https://spotify.com/artist/79p8c6SrQ3ko08Y4ctwoLR
X : https://x.com/Xi_DJ
Instagram : https://t.co/H8n04yK3JQ

 

取扱ブランド

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ヴィンテージ・シンセサイザー・プラグインの開拓者として席巻するデベロッパーブランド

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