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TRIDENT AUDIO Trident A-Range レビュー by 諸鍛冶辰也

Trident A-Rangeコンソールは、デビッド・ボウイやクィーンなどのブリティッシュ・ロックから、ビーチボーイズ、ルー・リードなど幅広い音楽ジャンルのレコーディングで愛用された名機として知られています。Tridentコンソールは80年代のシーンにおいて当然日本でも多くの制作現場で使用されており、今回はその中でも安全地帯などのレコーディング現場で使用した経験のあるエンジニア諸鍜治 辰也氏にTridentに関するお話を伺いました。同氏にその名機のイコライザー部分を取り出し、500シリーズのモジュールとして再現したTRIDENT AudioのA-Range 500、80B 500 Series EQをランドマークスタジオでのミックスダウン時に試してもらい、慣れ親しんだTridentサウンドを確認してもらった模様をレポートします。

 

今日はどのような方法で試していただけましたか?

先日レコーディングした女性のボーカルとスネアのトラックにTridentのEQを使ってみました。ギターやストリングスに使っても艶のある音を出せて良いと思いました。

 

オリジナルのA-rangeまたは80Bコンソールをお使いになられたことはありますか?

80Bシリーズは使ったことは無いのですが、A-Rangeコンソールは当時所属していたKRSスタジオで使っていました。キャラクター的には艶のあるサウンドで、APIやNeveよりもコントロールしやすいコンソールだったという印象を持っていました。他のコンソールよりもTridentの使用歴の方がはるかに長かったので、自分のリファレンスにもなっていたと思います。

 

A-Rangeらしさというのはどのあたりだと思われますか?

A-Rangeは良くも悪くも中域から高域にかけては特徴があるのと、たくさんあるコンソールの中でもヘッドルームに余裕がある方ですね。中域を調整するにはちょっとコツがいるので慣れが必要かもしれませんが、それが特徴になっているのかもしれません。

 

今回、500シリーズの2製品をご使用いただきましたが、どのような感想をお持ちになられましたか?

A-RangeはQが実機よりも少し鋭い感じがしますが、それ以外はよく似てますね。触っていると懐かしい感じがします。かかり方が顕著でクセがあるのでそれもわかりやすくていいですね。狙ったポイントに違和感なくすぐにたどり着けました。先ほども言いましたが、少しだけ慣れが必要かもしれませんが、慣れてしまえば非常に扱いやすいEQです。

4バンド + LPF&HPFモジュール。帯域増減はフェーダー操作で加減できるVPRモジュールのA-RANGE 500

 

80Bコンソールは使った経験がないのですが、A-Rangeの方がヘッドルームに余裕がある印象を受けました。EQの効き具合に関しては他のコンソールと比べてレンジ感的には大きな特徴があるという印象は受けなかったんですが、中域より低いレンジの音色は魅力的ですね。これはボーカルだったり、ストリングスにとって大切な周波数帯域なんですよね。みなさん下の周波数域はスッキリさせるために整理される方が多いですが、私は足しちゃうほうなんですよね。私が好きなのは400Hzから800Hzかけての部分は音にとって大切な部分でハーモニクスにも影響しますし、好きなところでもありますね。

 

このイコライザーを使用してより良い音に近づけるためにはどうやって使ったらいいと思いますか?

私の出発点でもあるA-Rangeの方では、プラスするEQよりもマイナスするEQの方が音の構成が分かりやすいので、そういった使い方の方が早く理想に近づけると思います。80Bの方は女性ボーカルで使ってみたのですが、胸のあたりの響き(600~700Hz前後)を出すのに使うと良いですね。効果が凄くわかりやすいので、レベルのセッティングに気を付ければ良い雰囲気を出せると思いますよ。

Toft Audio ATBのオリジナルとしても知られる大ヒットコンソールTrident Series 80BコンソールのEQセクションを500モジュール化した80B 500EQ

 

男性ボーカルにはどうでしょう?玉置さんのボーカルトラックにEQは使用しませんでしたか?

男性ボーカルに使う場合は、個性が強調されすぎないように女性よりも気を付けて使う必要がありますね。玉置さんのボーカルは、中域はいじる必要は無かったですね。トップエンドの16kくらいは状況に応じて調整しましたが、それ以外は何もしなかったです。

 

イコライジングをする上でアドバイスを頂けますか。

トーンコントロールで一つの音を突き詰めていくのも良いですが、全体的なサウンドがどうなっているかということを感じながら調整していく方が迷いが少なくなると思います。

プラスしても結局は足りないものばっかりですし、生音に限っては余分な成分もあるのでその辺の整理をするためにもEQはマイナスする方向で捉えた方が自分にとってはわかりやすいと思っています。どの音から始めるとかもなく、気になったところを整理していく…という感覚ですね。最初から決めてどこを調整しようっていうことは決めないで進めていくと、偶然の産物とはハプニングなどが生まれることもあるのでそれを楽しみにもしています。

 


 

諸鍛冶辰也 プロフィール

SCI、KRS Studioでの活動を経て、現在はフリーで活躍するエンジニア。絢香、徳永英明、May J.など多数のプロジェクトに参加。多くのアーティスト、業界各人より高い評価を得ている。

https://www.musicman.co.jp/database/10855

 

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