インタビュー & コメント

TONELUXチューブマイクロフォン JC37 レビュー by Gregory Germain

JC37を現役エンジニアに試聴して頂くこの企画の3人目は日本で活躍するフランス人エンジニアのGregory Germain氏。

日本的な視点と外国人の視点を合わせ持ち、日本国内だけでなく海外のセッションにも参加経験を持つ同氏ならではの視点でJC37について語ってもらった。

 

今回試して頂く際、ボーカルをレコーディングされたということですが、どんな印象でしたか?

普段は、BraunerやREDDなど新しいマイクを使うことが多く、そういったマイクはハイファイな印象を受けていますが、このマイク(JC37)は、新しくリリースされたモデルであるもののビンテージのマイクで録っているように感じました。私は37と38は使ったことがあるものの、37Aは使ったことが無いので想像となってしまいますが、その部分に関してはC-37Aのサウンドをきちんと踏襲できているんだろうと思います。

私が使った経験のある37と比べるとハイファイというはレンジが広い感じではありますね。それとめちゃくちゃきれいに真空管によるコンプレッションがかかりますよね。チューブマイクって独特のコンプレッションがかかるのですが、JC-37もそういう特徴をもっていて、コンプをかけずともそういうサウンドが得られますね。

C-37A自体は既にレアなマイクになっているので、実際の37Aの音を知っているエンジニアさんは少ないと思います。37(FET)は知っているけど37A(真空管)の音を知っている人は少ないんですよね。海外では人気あるんですけどね。

 

何かキャラクターを感じましたか?

ハイミッド・レンジにディップがあって、今回歌ってもらったシンガーさんは高域が出る方で、いつもはシビアに録らないといけない方なんですけど、JC-37を使うことで高域がきれいに伸びた感じで録れ、聞きやすい感じになりました。若干ゲインが小さい気はしましたが、耳が痛くなりそうな部分は抑えられていて、録りやすかったですね。

 

37Aはボーカルに使う人は少ない気がするのですが、他に録ってみたら合いそうな楽器はありますか?

アコギは絶対に合うと思います。アコギとエレキギターは良いでしょうね。私は、Steve Albiniが大好きで真似をしているのですが、彼はALTECの175と37Aの組み合わせをスネアに使っているんです。そうするとスネアの耳が痛くなるような部分を抑えてくれるので良いサウンドになるんですよ。それを真似したくても日本ではほぼ手に入らないので諦めていたのですが、これがあればあのサウンドを再現できるかもしれませんね。試してみたいです。

 

どんなジャンルのサウンドに合うと思いますか?

ボーカルに関していえば、今っぽいJ-POPではなく、ジャズとかロックとかのオーガニックなジャンルの方がいいでしょうね。歌に関しては、ミッドレンジが強かった印象があります。

楽器に関していえば、幅広くどんなジャンルでも使えると思いますし、特にアコースティックな音楽に使うと良いと思いますし、SPLが大きくて、クリーンでゲインが大きなプリアンプを使うと良いコンビネーションを発揮すると思います。

昔のマイクを再現しながらも、スペック表をみるとハイミッド・レンジにディップはあるもののハイレンジは良く伸びていて、4kとか6kの耳が痛くなるところは抑えられているけど、それ以降の上が聴こえてくるのでリボンマイクみたいに暗い感じにはならずちょうどいい感じに聴こえます。

なのでアクティブのリボンマイクを使うようなシーンに使っても良いと思います。例えば、ドラムのトップに立てても面白そうですね。先ほども言いましたけど、痛く感じる周波数を抑えてくれるので、シンバルを激しく叩くドラマーに使うとちょうど良い音になると思いますよ。

 

 

JC-37はジョーチッカレリ監修なのですが、チッカレリサウンド的な要素は感じますか?

感じますね。彼のようなパワーロックとか暖かみのあるポップスに合うようにできていますね。

 

今回、数人のエンジニアさんに試していただきましたが、ボーカルに使った方はGregoryさんだけでした。

そうなんですか?C37は元々フランク・シナトラが一番好きなマイクで、あれがないと歌わないって言われるほどだったと聞いたことがあります。彼以外にもナットキング・コールともそうですし、歌に使う人多いですよ。

 

ストリングスとかブラス、ギターなどに使う人という人が圧倒的に多かったんですよ。

まぁそうでしょうね、それらの楽器にはよく合うと思います。ボーカルに使うというケースは少ないからそうなったんでしょうね。ストリングスも時間があったら試してみたかったので、ちょっと残念です。

JC37の本領は楽器をレコーディングするのが一番いい結果を出しやすいと思います。SPLが大きくで、そんなにゲインはいらないんだけど、6kとかの耳が痛くなるような帯域を音楽的に抑えてくれる。そしてプライス的にもそんなに高くないですし。

このマイクはどんな人にお薦めですか?

アマチュアの人がこのマイクを使うとクセというか、難しいと感じるかもしれませんね。このマイクの特性を分かって、意図的にこのサウンドが欲しいというイメージが湧くのであればいいと思います。家でちゃんと録れる環境を持っていて、いくつかあるマイクの中のラインアップを広げるために持つのはいいと思います。あくまでもモダンな音がするマイクを持っていて、その先に欲しい音があれば使えるでしょう。これは音質に対する評価ではなくて、ぱっと聞いただけでは良さが分かりにくいからなんです。エレキギターのレコーディングには良さそうですね。プロの方はそれぞれ欲しい音や使う意図がはっきりしているので、また別の話になりますけど。

 


 

Gregory Germain

フランス生まれ、パリ育ち。
日本の文化に憧れて10代の頃から様々な日本の音楽に触れる。
20歳で来日し、レコーディングエンジニアを目指す為、音楽専門学校へ入学。
卒業後は、スタジオグリーンバードでアシスタントとして数多くのメジャーアーティスト、バンドの作品に参加。
日本語、英語、フランス語の三ヶ国語を巧みに操り、海外アーティストはじめ、海外プロデューサーとのセッションにも参加している。
そして、2011年Digz, inc Groupに入社。
ポップス、ダンスミュージックを中心にハウスエンジニアとして活躍。
レコーディング&ミックスをメインとしながらも、スタジオ管理、メンテナンス、音響デザインまで幅広く担当している。
2015年には世界のトップエンジニアだけが参加できる「Mix With the Masters」に世界各国から選ばれたエンジニアの一人として参加。
南フランスにある「La Fabrique」というスタジオにてTony Maseratiからトップクラスのミックステクニックを学ぶ。

 

HRオンラインストアからのオススメ製品

取扱ブランド

UK発、創業50年を超える由緒あるライブコンソール・メーカーが開発するハイエンドDJミキサー ラインナップ

ハリウッドを象徴するスタジオを擁するオスカー御用達のプレミアム・インストゥルメンツ

ヴィンテージ・シンセサイザー・プラグインの開拓者として席巻するデベロッパーブランド

音声分離と音楽認識の開発研究を追及するUK・ロンドン拠点のソフトウェアデベロッパー

洗練されたデザインと様々な音響アプローチのニーズに対応したインストゥルメント / スタジオエフェクトをリリースするスウェーデンのプラグイン・デザイナーブランド

80年代初頭の創業より業界をリードするDAWブランド Digital Performer / オーディオ、MIDI、AVBインターフェイス

鍵盤楽器にMPE機能を追加するほか新たな表現を演出するMIDIプラグイン・ブランド

リッチー・ホーティンとアンディ・ジョーンズがタッグを組んで開発するUKメイドのハイエンド・パフォーマンスコンソール

“Tilt EQ”の開発に代表される優れたクラフトマンシップと独自のサウンド・キャラクターを両立するプロオーディオ・ブランド

数々の名曲を生み出したA-Range、Series 80など歴史的コンソールを輩出するコンソール・ブランド

スウェーデン発、軽快動作と中毒性あふれるAddictiveシリーズ、RC-20などのインストゥルメント / エフェクトを多数開発するプラグイン・ブランド

[instagram-feed num=6 cols=6 imagepadding=0 showcaption=false showbutton=false showheader=false showlikes=false showfollow=false carousel=false]